瀬戸内海はきれい過ぎる?
下水処理場の排水規制で瀬戸内海から栄養素が失われ、養殖ノリの色落ちや出荷減少を招いているとして、香川県のノリ業者が悲鳴を上げている。
漁協は県に規制緩和を求めているが、妙案がないのが現状だ。
県水産課によると、2007年度の県内ノリ生産は3億2,100万枚で10年前のほぼ三分の一に。
販売金額も10年前の88億円から18億円に急減した。
鴨庄漁協(同県さぬき市)は、ノリの生育に必要な窒素やリンが規制で河川からほとんど流れ込まなくなったと主張。
海水温の上昇もあって数年前から色落ちが目立ち始めたという。
同漁協の理事で漁師歴30年の山本浩智さん(47)は「仲間がどんどん廃業している。
このままでは海も漁師も死ぬ」と嘆く。
同漁協など3漁協は1月、県に規制緩和を陳情した。
瀬戸内海への排水は現在、国が定めた化学的酸素要求量(COD)などの基準より厳しい数値を県が条例で設定。
しかし県の水質調査では海、河川ともに全国平均を下回っており、すぐ規制緩和するのは難しいという。
瀬戸内海の環境に詳しい香川大農学部の多田邦尚教授は「海の生態系は複雑で、規制を緩めてもすぐに水産物の水揚げ増加につながるものではなく、赤潮が頻発する恐れもある」と指摘。
「海底の泥に沈殿した窒素を活用するなど、海の中に今あるものを使う方法を考えなければならない」と話している。
共同通信社「海運水産ニュース」より